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Holacracy-Constitution.md

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ホラクラシー憲章

前文

「批准者」 はここに、指定された 「組織」 の正式な権限構造として本 「憲章」 を採用する。これにあたり、批准者は、批准者に移譲の権限がないものを除き、組織をガバナンスおよび運営するための権能を本憲章の規則および取扱いに移譲する。批准者またはその承継人は、本憲章の採用において拠り所とした権限をもって、本憲章を修正しまたは廃止することができる。ただし、修正は書面により行われることを条件とする。

本憲章の採用前に組織において有効であった既存の方針および制度は、採用後も引き続き完全に有効である。ただし、本憲章に定める権限および運営プロセスによる場合を除き、それらを拡大または変更することはできない。これらの旧方針および制度は、本憲章のプロセスを通じて、それらに代わるまたは反するものが定められ次第、その後はすべての重要性および権限を失う。

組織は、組織のガバナンスおよび運営を助けるため、批准者に加え、他の 「パートナー」 を指定することができる。ただし、パートナーもまた本憲章に関連するすべての規定の遵守に同意していることを条件とする。このような制限の中で、組織は、批准者が別段に定める場合を除き、パートナーにステータスを与え、またはパートナーを解任する方法を定義することができ、また批准者は、組織のために初期パートナーを指定することができる。

各パートナーは、批准者が本憲章の採用前に持っていた権限の範囲で、本憲章により与えられた権限に依拠することができる。パートナーに課せられるすべての責任および制約は、本憲章およびその運営プロセスからのアウトプット、ならびにパートナーが組織に対しておよび組織を代理して行為する際に有する法的義務に由来する。暗黙の期待または制約は、パートナーに対して何らの権能も有さず、また本憲章により与えられた権限外で発せられた指示もまた、一切権能を有しない。

第1条: 組織構造

1.1 ロールの定義

「ロール(役割)」 とは、ある人が組織を代理して担い、意欲的に活動していくもので、これにより組織が構成される。ロールを担う人は誰でも、そのロールの 「ロールリード」 である。

ロールの定義は、それを説明する名称と、次のうちの1つ以上から成る。

  • (a) 1つの 「パーパス(目的)」: ロールが追求したい、または実現したい能力、可能性、または目標。
  • (b) 1つ以上の 「ドメイン」: ロールがそのパーパスの実現のために自身の所有物として、他のロールからの制約を受けることなく、運用することができる資産、プロセスまたはその他の事項。
  • (c) 1つ以上の 「アカウンタビリティ」: ロールが他のロールのために、または自らのパーパスを実現するために、運営し、実行する継続的な活動。

ロールは、権限もしくはロール内で適用される特別なルールを付与または制約する 「ポリシー」 を持つこともできる。

1.2 ロールリードの役割

ロールリードは次の役割を担う。

1.2.1 テンションの取り扱い

ロールリードには、自身のロールのパーパスおよびアカウンタビリティに関して、現実に実現されている状態と、理想的にロールの潜在性が発揮されている状態とを比較して、これら2つの間にあるギャップ(このギャップを、以下 「テンション」 という)を常に明らかにしておく役割がある。さらに、ロールリードは、これらのテンションを解決しようとするために、行動する役割を担っている。

1.2.2 パーパスおよびアカウンタビリティの取り扱い

ロールリードには、以下を定めることにより、ロールのパーパスおよびそれぞれのアカウンタビリティを実行する方法を定期的に検討する役割がある。

  • (a) ネクストアクション(次のアクション): 少なくとも競合する優先順位の高い事項が存在しなければ、直ちに実行できる有用な行動。および
  • (b) プロジェクト: 少なくとも競合する優先順位の高い事項が存在しなければ、前に進めることが有用と考えられる具体的な成果。

1.2.3 プロジェクトの細分化

ロールリードには、ロールにおける進行中のプロジェクトのそれぞれについて、ネクストアクションを定期的に定める役割がある。

1.2.4 プロジェクト、ネクストアクションおよびテンションのフォローアップ

ロールリードには、すべてのプロジェクトおよびネクストアクションが描かれたリストを通じて、ロール状況を理解する役割がある。また、解決をしようとしているテンションについても、少なくとも、テンションを取り扱い、プロジェクトまたはネクストアクションに反映するまでは、テンションとして取り扱う必要がある。ロールリードはまた、このリストを定期的に見直しおよび更新し、リストをロールの潜在的な業務についての信頼できる情報源として維持する役割を担う。

1.2.5 ネクストアクションの実行

ロールリードは、ロールとして活動することが可能な時はいつでも、取ることができるネクストアクションについて検討し、また最も組織の価値を高めるものを実行する役割を負う。

1.3 サークル

「サークル」 とは、共通のパーパスに沿って、ロールやポリシーを組織化するための器である。サークル内のロールやポリシーは、そのサークルで、現実に活動している 「ガバナンス」(組織構造) を形作る。

1.3.1 ロールの細分化

それぞれのロールの内部には1つのサークルが存在する。このサークルは、それ自身がロールやポリシーを持ち、サークルの業務を細分化し組織化する。ただし、このことは、本憲章において定めるロールには適用されない(これらのロールは、それ以上細分化することができない)。

ロール内部のサークルは、そのロールを保有している、より広いサークルのサブサークルとみなされ、一方で、より広いサークルは、そのスーパーサークルとなる。

1.3.2 ドメインの委譲

サークルがロールの1つにドメインを付与すると、そのロールのロールリードは、サークルを代表してドメインを運用することができる。サークルは、そのサークル自身のドメインに該当するロール、またはサークル内部のプロセスにおいてのみ関係するロールだけに、ドメインを付与することができる。

ロールによるドメインの運営が開始されると、そのロールは、自身のガバナンス内にドメインを規定するポリシーを作ることができる。ただし、ドメインを委譲したサークルは、同様に、そのドメインを規定するポリシーを定める権利を維持する。これらのポリシーに不一致があった場合には、サークルで定めたポリシーが、ロールによって定められたポリシーに優先する。

ロールへのドメインの付与は、明示的な定めがある場合を除き、サークルが金銭の支出または資産を活用するために有する権利の委譲とはならない。

1.3.3 アンカーサークル

組織全体のパーパスを持つ最も広いサークルは、組織の 「アンカーサークル」 である。アンカーサークルは、組織自体が経営するすべての権限およびドメインを保有し、スーパーサークルを持たない。アンカーサークルは、ポリシーを通じ、アンカーサークルのパーパスを変更したり、アカウンタビリティを明確にすることができる。

批准者は、本憲章の採用をもって、アンカーサークル内の初期構造やその他のガバナンスを定義することができる。

1.3.4 サークルへのリンク

ロールは、別サークルまたはそのスーパーサークルのポリシーによる招待があった場合には、別サークルにリンクすることができる。

別サークルにリンクされると、ロールは、別サークルのガバナンスの一部とみなされる。別サークルは、ロールに対して追加を行うこと、および後にその追加を変更することができる。ただし、別サークルはロールを削除したり、元のサークルによって追加されたものを変更することはできず、元のサークルは、別サークルが追加したものを変更もしくは削除することはできない。ロールへのアサイメントの追加または変更の権限は、継続して元のサークルが持つ。ロールがリンクしているサークルは、そのスーパーサークルとはみなされず、またそのロールの内部のサークルは、そのサークルのサブサークルとはみなされない。

サークルは、サークルへのリンクを招待するポリシーを削除することにより、またはポリシーに定義された別の仕組みにより、ロールのリンクを解除することができる。ロールは、自身のポリシーまたはその元のサークル内のポリシーに別段の定めがない限り、リンク先のサークルから自らリンクを解除することもできる。サークルからのリンクが解除されると、そのサークルによってそのロールに追加されたガバナンスは、自動的に削除される。

1.3.5 ファシリテーターロールとセクレタリーロール

サークルは、サークルの 「ファシリテーター」 を選任することができる。選ばれたファシリテーターは、サークルにおいて「憲章に合致したサークルのガバナンスとオペレーションの実践」というパーパスを持つ 「ファシリテーターロール」 を担う。

サークルは、サークルの 「セクレタリー」 を選任することができる。選ばれたセクレタリーは、サークルにおいて 「憲章上、必要とされるサークルでの、記録およびミーティングの安定化」というパーパスを持つ 「セクレタリーロール」 を担う。

サークルは、アカウンタビリティまたはドメインを自身のファシリテーターロールまたはセクレタリーロールに追加することができ、さらに、その追加を修正または削除することができる。サークルは、ファシリテーターロールとセクレタリーロールのパーパスを修正または削除することはできず、また本憲章によって、ファシリテーターロールとセクレタリーロールに付与されているアカウンタビリティまたはドメインを修正または削除することもできない。

1.4 サークルリード

ロールリードを担うことは、そのロールの内部のサークルにおいて 「サークルリード」 を担うこと、よって、そこで 「サークルリードロール」 を担うことも意味する。サークルリードロールは、そのサークル内の別のロールまたはプロセスの対象となっている場合を除き、その外側のロールのパーパス全般、および、そのロールに関するすべてのアカウンタビリティを持つ。

サークルのポリシーに別段に記載する場合を除き、アンカーサークルにはサークルリードは存在しない。

1.4.1 ロールのアサイン

サークルリードは、サークルのロールのアサインを担当し、またサークル内でその役割を担うことを希望する人に対し、同時の複数人へのアサインを含め、ロールにアサインすることができる。そのようにアサインされた人は、その人による別段の合意がある場合を除き、後にロールを辞任することができる。サークルリードは、サークル内のロールへのアサインをいつでも取り消すこともできる。

サークルリードはさらに、特定の状況のみに焦点を絞ってロールをアサインすることができる。そのためには、ロールの定義全体がそのような状況に関連していなければならない。そのように焦点が絞られたアサインメントは、そのそれぞれが独立したロールであるかのように行動する。ロールのパーパス、ドメインおよびアカウンタビリティもすべて、焦点が絞られたアサインメントの範囲内に限り、継続して適用される。

サークルがロールのアサインのコントロールを別のロールまたはプロセスに委譲した場合を除き、サークルリード以外の者がサークル内でロールをアサインすること、またはロールのアサインを取り消すことはできない。ポリシーは、ロールのアサインまたは取り消しについて、さらに制約を付与することができる。

1.4.2 担当者がいないロールを補う

サークルにおいて、いずれかのロールの担当者がいない場合、各サークルリードが自動的にそれらのロールのロールリードとなる。

組織のパートナーではない人々だけがロールを担っている場合もまた、各サークルリードが自動的に、そのロールのロールリードとなる。 ただし、この既定のアサインは、非パートナーが、パートナーが果たすべき関連責任および義務を積極的に果たさない場合に限り、適用される。

1.4.3 優先順位およびストラテジーの定義

サークルリードは、ロール間での優先順位の混乱が起きないようにするために、サークルでの潜在的な取り組みの相対的な価値を判断することができる。サークルリードはまた、サークルのために、サークルにおける優先順位付けを導く経験則である1つまたは複数の 「ストラテジー」 を定義することもできる。

1.4.4 外部参照の手順

サークルリードは、サークル外のガバナンスがサークルそのもの、またはサークル内のロールを参照する場合には、その参照を更新して、代わりにサークル内の別のロールを参照するようにできる。この明確化は、サークルのガバナンスの変更とはみなされない。

1.4.5 サークルリードロールの修正

サークルは、そのサークルリードロールのパーパスを変更することも、またロールを削除することもできない。

サークルは、サークルリードロールにアカウンタビリティまたはドメインを追加すること、また後にこれらを削除することができる。しかし、追加したものは、自動的にすべてのサブサークルのサークルリードロールにも再帰的に適用される。サークルは、自身のサークルリードロールのみに、またはサークル内の関連するサークルリードロールのみに、アカウンタビリティまたはドメインを追加することはできない。

サークルは、自身のサークルリードロールのアカウンタビリティ、ドメイン、権限または機能を削除することができる。これを行うためには、それらをサークル内の別のロールに置くか、またはそれらを実行するための代替手段を定義する必要がある。これにより、委譲が続いている限り、該当する権限または要素は自動的にサークルのサークルリードロールから削除される。

第2条: 協力の約束事

2.1 透明性に関する約束事

パートナーは、組織のロールリードの依頼があった場合には、ロールリードに対し、以下のとおりに透明性を提供する必要がある。

  • (a) プロジェクトおよびネクストアクション: パートナーは、組織のために実施しているプロジェクトおよびネクストアクションを共有する必要がある。
  • (b) 相対的優先度: パートナーのプロジェクトもしくはネクストアクションと、パートナーの注目を集めるそれ以外の事柄との相対的な優先度の判断を共有する必要がある。
  • (c) 見込: パートナーのプロジェクトまたはネクストアクションが完了すると想定される時期の見込を提供する必要がある。パートナーの現況および優先順位を考慮した大まかな見込で十分である。詳細な分析や計画は必要ではなく、また、この見込は確約するものではない。ガバナンスに別段の記載がある場合を除き、パートナーには、見込の結果を確認する義務も、または見込に変更があった場合に、見込に関係する人に報告を行う必要もない。
  • (d) チェックリストアイテム: パートナーは、自身のロールまたは組織のパートナーとして繰り返し実施するアクションの完了を確認する必要がある。依頼があった場合には、もはや有用ではなくなったとパートナーが考えるようになるまでは、繰り返し実施するアクションの確認を引き続き、定期的に共有する必要がある。
  • (e) メトリクス(指標): パートナーは、自身のロールにおいて、または組織のパートナーとして収集したメトリクスを共有する必要がある。依頼があった場合は、もはや有用ではなくなったとパートナーが考えるようになるまでは、メトリクスを引き続き、定期的に共有する必要がある。
  • (f) 進捗状況の更新: パートナーは、最後に共有した時点以降の、自身のロールにおける、または自身のプロジェクトに向けた進捗の概要を共有する必要がある。依頼があった場合は、もはや有用ではなくなったとパートナーが考えるようになるまでは、かかる最新情報を引き続き、定期的に共有する必要がある。
  • (g) その他の情報: パートナーは、直ちに入手可能であり、かつ共有することが害とならないその他の情報を共有する必要がある。

2.2 取り扱いに関する約束事

パートナーは、組織のロールリードからのメッセージおよび依頼を次のとおり、速やかに取り扱う必要がある。

  • (a) 明確化の依頼: パートナーのプロジェクトまたはパートナーのロールのアカウンタビリティについて、次の段階を明確にするよう他の人から求められる場合がある。この際、パートナーが実行することが可能なネクストアクションがある場合は、これを先に進めるためにそれを決定し、伝える必要がある。もし、そのようなネクストアクションが存在しない場合、パートナーはネクストアクションが実行可能になる前に何を待っているのかを伝える必要がある。
  • (b) プロジェクトおよびネクストアクションの依頼: 特定のネクストアクションまたはプロジェクトの実行を他の人から求められる場合がある。パートナーは、少なくとも競合する優先順位の高い事項が存在せずに、自身のロールのうちの1つとして、または組織のパートナーとして取り組むことが適切であると考える場合には、これを引き受け、進捗を確認する必要がある。そのように考えない場合、パートナーは、その理由を説明するか、または依頼者の目標を達成できるとパートナーが考える代替案を提案する必要がある。
  • (c) ドメインへの影響の依頼: あなたのロールの1つが運営するドメインに影響を与えることを他の人から求められる場合がある。パートナーは、それによってパートナーのロールのパーパスまたはアカウンタビリティを実行する能力が低下する理由がない場合は、その依頼を許容しなければならない。もし、実行する能力が低下する理由がある場合には、それを依頼者に説明しなければならない。

2.3 優先順位付けに関する約束事

パートナーは、以下に従って自身の関心事に優先順位を付ける必要がある。

  • (a) 他のロールリードへの対応: パートナーは、通常、他のロールリードからパートナーのロールへの受信メッセージへの対応を、パートナー自身のネクストアクションの実行よりも優先させる必要がある。ただし、パートナーが行う対応が迅速なままであるならば、自身の都合のよい時期にまとめて対応することができるようになるまで、メッセージへの対応を遅らせることができる。このような対応には本条の約束事への関与、そして依頼に応じたメッセージへの対応方法の共有が含まれる。パートナーが把握するネクストアクションまたはプロジェクトの実行は含まれない。
  • (b) ミーティング: パートナーは、本憲章に定義するミーティングへの参加を、パートナー自身のネクストアクションの実行よりも優先させる必要がある。ただし、他のパートナーが特定のミーティングを優先するように、明確に依頼した場合に限られる。それにもかかわらず、ミーティングの時間帯に既に予定がある場合には、その依頼を断ることができる。
  • (c) サークルの優先順位: ロールにおいて何に取り組むかを選ぶ際は、そのロールの、および、そのロールを含むサークルの、さらに、そのスーパーサークルの、公式なストラテジーまたは相対的な優先順位を考慮する必要がある。この公式の優先順位は、パートナー自身の個人的な優先順位または組織の優先順位についてのパートナー自身の判断よりも、組織にとって重要なものとして扱われる必要がある。サークルの公式な優先順位とは、サークルリードによって、または優先順位に関する混乱を解決し、サークルのストラテジーを定義する権限を備えた他のロールもしくはプロセスによって、定義されるものをいう。
  • (d) 期限: サークルのガバナンスまたは公式なストラテジーもしくは優先順位に、あることを実施する上での期日を明示する期限が含まれている場合、それは、その実施による影響に関わらず、期限を守るための命令であるとは解釈しない。その代わりに、パートナーはそれを、当該サークルの他の行動よりも優先される、その期限を守るために必要な行動の公式な優先順位として解釈し、そのように行動する必要がある。ロール間の優先順位の混乱を解決する権限を持つサークルリードまたは他のロールもしくはプロセスは、この優先順位を無効にすることができる。

2.4 リレーショナル・アグリーメント

パートナーは、他のパートナーと 「リレーショナル・アグリーメント」 を結ぶことができる。これは、組織での仕事においてどのように協力し合っていくのか、または組織のパートナーとしての一般的な役割をどのように果たしていくのかについての合意である。この合意により、本条に掲げた義務を追加または明確化することができるが、これらの義務との不一致があってはならない。

リレーショナル・アグリーメントは、一般的に仕事を下支えする行動の形成に重きを置き続けなければならず、あるロールにおいて行われる仕事の期待値や、パートナーが異なるロール間で優先順位を付ける方法に関する期待を定めることはできない。さらに、取るべき具体的な行為または守るべき行動上の制約のみを定めることができ、また具体的な成果を得るという約束や抽象的な品質を具現化するという約束を含んではならない。

パートナーは、自身の個人的な意向により、または自身が担うロールの役割を果たすために、別のパートナーにリレーショナル・アグリーメントを求めることができる。当該パートナーは、自身の個人的な意向に基づいて、求められたリレーショナル・アグリーメントを承諾し、または拒否することができる。別段の合意がある場合を除き、いずれの当事者も、相手方当事者に通知することにより、後にリレーショナル・アグリーメントを解除することができる。

パートナーは、自身の行動を、自身が締結した書面によるリレーショナル・アグリーメントに沿ったものとする必要がある。組織のために、ミーティングやプロセスをファシリテートする人もまた、ミーティングやプロセスの期間中、本憲章に定義された内容に抵触しない限り、このリレーショナル・アグリーメントを施行することができる。

第3条: タクティカル・ミーティング

パートナーは、互いにその責任および約束事に関わる上でパートナーを支援するために 「タクティカル・ミーティング」 を招集することができる。加えて、各サークルのセクレタリーには、サークルの定例タクティカル・ミーティングの予定を立てる役割がある。

3.1 出席者

サークルのセクレタリーが招集する定例タクティカル・ミーティングについては、ポリシーに別段の定めがある場合を除き、サークルのすべてのロールが招集される。それ以外のタクティカル・ミーティングについては、ミーティングを招集するパートナーは、ミーティングに招集するロールを指定する必要がある。招集者が招集を、あるロールの一部のロールリードのみに限定しない限り、ロールのロールリードを担うすべてのパートナーが、ロールを代表して出席するよう招集される。

3.2 ミーティングのプロセス

サークルのファシリテーターには、サークルの定例タクティカル・ミーティングの進行という役割があり、またサークルのセクレタリーには、タクティカルミーティングのアウトプットの記録や共有という役割がある。サークルのセクレタリー以外の者によって招集されたタクティカル・ミーティングについては、タクティカル・ミーティングを招集したパートナーがこれを進行してそのアウトプットを記録するか、または進行および記録を行う別のボランティアを募集、もしくは適切なロールに依頼する必要がある。

ポリシーに別段の定めがある場合を除き、ミーティングを進行する人は、以下のプロセスを用いる必要がある。

  • (a) チェックインラウンド: 各参加者は、順番に自身の現況を共有し、またはミーティングの開始にあたってのコメントを述べる。これに対する応答は認められていない。
  • (b) チェックリストレビュー: 各参加者は、自身のロールに関して、ミーティングで定期的に共有している繰り返しのアクションが完了していることを確認する。
  • (c) メトリクス(指標)レビュー: 各参加者は、自身のロールに関して、ミーティングで定期的に共有しているメトリクスを伝える。
  • (d) 進捗状況の更新: 各参加者は、自身のロールに関して、ミーティングで定期的に共有しているプロジェクトまたはその他の取り組みにおける進捗を説明する。参加者は、仕事の一般的な状況ではなく、前回の共有以降の進捗のみを共有する。
  • (e) アジェンダづくり: 参加者は、ミーティングにおいて取り扱われる内容から成るアジェンダを作成する。各参加者は、アジェンダ項目のそれぞれを短いラベル(英単語2,3語程度)で表現する。また、希望するだけいくつでも、アジェンダ項目を追加することができる。ここでの説明や議論は認められていない。参加者は、この段階の後、既に設定されたアジェンダ項目の処理中でも、アジェンダを追加することができる。
  • (f) トリアージ: 各アジェンダ項目を取り扱うため、アジェンダ項目の作成者は、パートナーとしての一般的な立場にある他の参加者に対して、または参加者がミーティングで代表しているロールに対して、依頼を行うことができる。ただし、ロールへの依頼は、依頼者がミーティングで代表しているロールに対してのみ、行うことができる。ミーティングを進行する人は、各アジェンダ項目に割り当てられた時間をマネジメントし、すべてのアジェンダに時間を取ることができるようにする。また、いずれかの項目がミーティングにおいて定められた時間を超えた場合にはプロセスを中断させることができる。
  • (g) クロージングラウンド: 各参加者は、順番に、ミーティングの終了にあたっての振り返りを共有する。これに対する応答は認められていない。

サークルのポリシーを通じて、サークルのロールによって招集されたタクティカル・ミーティングについて、代わりとなるプロセスを定めるか、またはこの既定のプロセスを修正することができる。

Article 4: 権限の分散

ロールリードは、本憲章に定義するルールや約束事を破らない限り、ロールのパーパスまたはアカウンタビリティを実行するためのアクションを取り、または決定を行う権限を持つ。ロールリードは、これから行う可能性のある行動に優先順位を付ける際および選択する際に、それぞれの行動が組織に与える相対的な価値について、自身の合理的な判断を用いることができる。

4.1 権限に関する制約

ロールリードは、権限に関する次の制約に従わなければならない。

4.1.1 ポリシーに違反しないこと

ロールとして行為する時は、ロール自体のポリシーまたはロールを含むサークルのポリシーに違反してはならない。

4.1.2 ドメインに影響を及ぼす前に許可を得ること

ロールリードには、ロールを担う際、自身のロールのドメインに影響を与え、これをコントロールする権限がある。

また、ロールリードは、自身のロールを含みかつ他に委譲されていないサークルが保有するドメイン、またはサークル自体が影響を与える可能性のあるドメインにも、影響を与えることができる。ただし、ロールリードは、自身が与えた影響を元に戻すことが実質的に困難である、または費用がかかると考える場合は、許可を得る必要がある。

ロールリードは、許可を得ている場合を除き、自身のロールを含まないロールまたはサークルに委譲されたドメインをコントロールし、または著しい影響を与えることはできない。また他の独立した存在が所有するドメインを許可なくコントロールし、または影響を及ぼすことはできない。

ドメインに影響を与えるために必要である場合は、そのドメインをコントロールする誰からでも許可を得ることができる。また、特定の行動を取る旨を告知して、関係するドメインを持つ人に反対意見を促すことによっても、許可を得ることができる。ただし、反対意見の応答のために必要となる合理的な時間については、待つ必要がある。合理的な時間が経過した時点で、誰からも反対意見がない場合、ロールリードが行った告知が届いたロールが所有するドメインに、影響を与えるための許可を得たことになる。書面による告知では、ロールリードが使用するコミュニケーション用のチャネル上でのメッセージを、通常読んでいる者に届いたものと想定することができる。このようにして得られた許可は、ロールリードが告知した特定の行動を取る際にのみ適用される。ポリシーは、このプロセスを変更し、または制限することができる。

4.1.3 金銭の支出前に許可を得ること

事前に許可を得ている場合を除き、金銭その他のリソースを支出する(使用する)ことはできない。この許可は、支出目的で使用するリソースを、既にコントロールしているロールから取得しなければならない。組織の重要な財産を処分することや、またはその権利を著しく制限することは、支出であるとみなされる。

支出の許可を得るには、許可を求めるロールに対して書面によって支出の意図を告知する必要がある。告知は、そのロールのまたはそのロール内でロールリードを担うすべてのパートナーが通常、それを見る場所で、共有する必要がある。告知の内容には、支出の理由と、支出元のロールを含めなければならない。次に、検討および応答のために必要となる合理的な時間については待つ必要がある。ロールリードからの告知を受け取った者は支出をさらに検討するためにこれをより広いサークルに相談することができ、その間はリソースの支出を進めることはできない。ただし、ロールリードが許可を求めるロールのロールリードは、相談した者と同様に、相談自体を取り下げることができる。合理的な時間が経過し、かつ有効な相談が存在していない時点で、ロールリードのロールはこれらのリソースを使うことができる。ロールリードは、自身が指定した目的のためにリソースを使うことができ、またさらに、他の人にリソースの使用を許可することができる。ロールリードが許可を求めたロールもリソースのコントロールを失うが、そのロールのロールリードはいつでもリソースの使用許可を取り消すことができる。

ポリシーによって、このプロセスを別の方法に変更することができ、またはあるロールにサークルのリソースの使用をコントロールする権限を直接与えることもできる。

4.2 解釈権限

パートナーは、本憲章およびその権限下にある事項を解釈する上で、合理的な判断を用いることができる。さらに、直面している特定の状況の範囲内で、これらをどのように適用するかについてさらに解釈し、その解釈に基づいて行動することができる。ただし、すべてのガバナンスの解釈は、それを含むサークルのパーパスおよびアカウンタビリティの観点から、また、そのサークル、または、そのスーパーサークルの公式の解釈上の判断の範囲内で、行わなければならない。そうした観点またはこれらの判断に一致しない解釈を用いることはできない。

4.2.1 解釈の不一致

パートナーが行う本憲章および組織のガバナンスの解釈が、他のパートナーの解釈とは一致しないことがある。この場合、当事者はいずれも、影響を受けたサークルのセクレタリーに、どちらの解釈を使用するかの判断を求めることができ、またセクレタリーは、依頼に応じて憲章およびその権限下の事項を解釈する役割がある。セクレタリーからの回答の後は、関連する本文または文脈に変更が生じるまでは、全員がセクレタリーの判断に従わなければならない。

解釈についての判断が下された後、セクレタリーは、その判断およびその背後にある論理を公表することができる。公表後は、該当するサークルおよびそのサークルに含まれるサークルのセクレタリーは、将来的な判断においても、その論理に沿うよう努める必要がある。ただし、セクレタリーは、やむを得ない新たな状況により、その論理が古くなった場合には、それを否定することができる。

セクレタリーの解釈については、スーパーサークルのセクレタリーに申立てを行うことができる。スーパーサークルのセクレタリーは、サブサークルのセクレタリーによる解釈を覆すことができる。

4.2.2 無効なガバナンスの削除

パートナーは、サークルのセクレタリーに、サークルのまたはそのサブサークルのガバナンスの有効性を判断するよう求めることができる。ガバナンスが本憲章の規則に違反しているとセクレタリーが結論付けた場合、セクレタリーは、これをサークルの記録から削除する必要がある。削除の後、セクレタリーは、削除した事項およびその理由を、サークルでロールを担うすべてのパートナーに速やかに伝える必要がある。

4.3 インディビジュアル・イニシアチブ(個人イニシアティブ)

パートナーは、場合によってはロールの権限を超えて行為し、または本憲章の規則を破ることで 「インディビジュアル・イニシアチブ(個人イニシアティブ)」 を取る権限が認められている。

4.3.1 認められる状況

次のすべてが当てはまる場合に限り、パートナーは、インディビジュアル・イニシアチブを取ることができる。

  • (a) 組織内の一部のロールのパーパスを果たし、またはアカウンタビリティを実現するために誠実に行為している。
  • (b) 自身の行為により、その行為が作り出す可能性のあるテンションよりも多くのテンションを組織のために解決し、または防ぐことができると確信している。
  • (c) 自身の行為は、既に支出が認められている以上の支出を組織に求めるものではない。
  • (d) 自身の行為がポリシーまたはドメインの侵害となる場合において、許可の取得やガバナンスの変更が遅れることで、より多くの価値が失われることになると確信している。

4.3.2 コミュニケーションおよび復旧

パートナーは、インディビジュアル・イニシアチブを取る際に、著しく影響を受けるであろうと考えるロールリードに対して、自身の行為を説明しなければならない。パートナーは、そのロールリードの依頼に応じて、自身のインディビジュアル・イニシアチブにより生じたテンションの解決を支援するために、さらなる措置を取らなければならない。また、ロールリードの求めがあれば、同様のインディビジュアル・イニシアチブを取ることを控えなければならない。

パートナーは、自身の通常の仕事よりも、本条により要求されるコミュニケーションおよび復旧を優先する必要がある。ただし、パートナーの行為により影響を受けるすべてのロールを含むサークルのサークルリードは、この既定の優先順位を変更することができる。

第5条: ガバナンスプロセス(組織構造に関するプロセス)

サークルのガバナンスを変更するには、ここに定義する 「ガバナンスプロセス(組織構造に関するプロセス)」 を用いなければならない。

5.1 ガバナンスプロセスへの参加者

各サークルは、ガバナンスプロセスにおいて、ロールを代表する 「サークルメンバー」 から成るグループで構成されている。

サークルのサークルメンバーは、サークルリードロールを担うパートナー、およびサークル内のロールのロールリードを担う各パートナーである。ロールが複数のロールリードを持つ場合、サークルは、サークルメンバーとして、ガバナンスプロセスにおいて、そのロールを代表するパートナーの数を限定するポリシーを採用することができる。

5.1.1 サークルレプ

サークルのサークルメンバーは、そのサークルを含むより広いサークルの中で、そのサークルを代表する、サークルの 「サークルレプ」 の選出または交代のための選挙をいつでも求めることができる。選出されたサークルレプは、サークルにおいて、「より広いサークルとのプロセスに関連するテンションを見つけ出し、解決する」というパーパス、および以下のアカウンタビリティを持った 「サークルレプロール」 を担う。

  • (a) サークル内でロールリードより伝えられたテンションの理解に努めること。
  • (b) サークルを含むより広いサークルとのプロセスに関する適切なテンションを識別すること。
  • (c) サークルに影響する制約を取り除くために、より広いサークルの中で生まれるテンションを取り扱うこと。

サークルは、ポリシーに代替のプロセスが定義されている場合を除き、ここで定義される統合的選挙プロセスを使用して、サークルレプを選出する必要がある。サークルのサークルメンバーのみがそのサークルレプを担う資格を有する。サークルのサークルリードを担う人が同時にサークルレプを担うことはできない。サークルのポリシーにより認められている場合を除き、複数の人が同時にサークルのサークルレプを担うことはできない。

選出されたサークルレプは、そのサークルを含んでいるあらゆるサークルのサークルメンバーとなり、サークルリードのようにそのサークルを代表する権限を持つ。より広いサークルは、ポリシーに、内包するサークルのサークルレプが、サークルメンバーとなることを制限し、または阻止することを設定できる。しかし、これは、そのサークルレプロールが、そのサークルにおいて他に同等の代表手段を持つ場合に限られる。

サークルは、自身のサークルレプロールにアカウンタビリティまたはドメインを追加することができ、また、そのように追加されたものを修正もしくは削除することができる。サークルが、サークルレプロールのパーパスや、本憲章によりサークルレプロールに設定されたアカウンタビリティを、修正または削除することはできない。

5.1.2 ファシリテーターおよびセクレタリー

サークルのファシリテーターは、ガバナンスプロセスを進行する役割を担っている。サークルのセクレタリーは、ガバナンスプロセスのアウトプットの記録および共有について役割を担い、また、サークルのガバナンスプロセスの記録をドメインとして持つ。

サークルのサークルメンバーは、いつでも、サークルのファシリテーターまたはセクレタリーの選出または交代のための選挙を求めることができる。サークルは、ここに定義されている統合的選挙プロセスを使用して、ファシリテーターまたはセクレタリーを選出する必要がある。他の手段によって、ロールまたはポリシーがファシリテーターロールもしくはセクレタリーロールをアサインし、またはアサインを削除することはできない。また、ここで要求されるプロセスを変更することもできない。通常、この選挙の適格候補者は、サークルのサークルメンバーに限定される。ただし、サークルまたはスーパーサークルのポリシーは、適格候補者を追加または制限することができる。

5.2 ガバナンスの範囲

サークルのガバナンスプロセスにおいて、サークルメンバーは、以下のことを行うことができる。

  • (a) サークルのロールの定義、修正または削除。
  • (b) サークルのポリシーの定義、修正または削除。
  • (c) サークル自体のロールまたはポリシーを、サブサークルに、もしくはそのサブサークルに、移行すること。ただし、それにより、サブサークルのパーパスまたはアカウンタビリティが実現される場合に限る。
  • (d) ロールまたはポリシーを、サブサークルから、もしくはそのサブサークルから、サークルに移行すること。ただし、それがサブサークルのパーパスまたはアカウンタビリティの実現に、もはや無関係である場合に限る。
  • (e) サークル内で選出されるロールについての選挙の実施。

上記以外の決定は、サークルのガバナンスプロセスにおいて、有効なアウトプットにはならない。

5.2.1 ポリシーの範囲

ポリシーは、次の1つまたは複数で構成することができる。

  • (a) サークル内の1つまたは複数のロールの権限に関する制約。
  • (b) サークルまたはサークルリードが1つまたは複数のロールに対して持つ権限の付与。
  • (c) サークルのドメインを運営し、または、該当するドメインに影響を与える権限の無い人もしくはロールへの権限の付与。または権限がある場合、その方法への制約。
  • (d) 変更が明確に認められている場合に、本憲章における既定のルール、約束事またはプロセスを変更するための規則。

権限を付与または制約するポリシーは、別段の記載がある場合を除き、すべてのサブサークルにおいても再帰的に適用される。本憲章の既定のルール、約束事またはプロセスを変更するポリシーは、そのポリシーを持つサークル内においてのみ適用され、または、明記されている場合には、すべてのサブサークル内においても再帰的に適用される。後者の場合において、元のポリシーにより、明確に禁じられている場合を除き、サブサークルは、自らのポリシーによってそのポリシーを無効にすることができる。

5.3 ガバナンス(組織構造)の変更

サークルのサークルメンバーは、ガバナンス(組織構造)の変更を提案することにより、ガバナンスプロセスを開始することができる。これを行うためには、 「提案者」 はまず、セクレタリーによって認められたコミュニケーション用のチャネルを使用して他のサークルメンバー全員に書面で 「提案」 を共有しなければならない。これら他のサークルメンバーは、次に、提案の採用に関して、それを明らかにするための質問を行い、反応を共有し、懸念を提起することができる。それぞれの懸念事項は、ここに示す基準を満たす場合に 「反対意見」 といい、これを提起した者を 「反対意見を出した人」 という。

各サークルメンバーに提案への反対意見がないことが確認されると、その提案は採用され、サークルのガバナンスが修正される。反対意見が出た場合、提案者および反対意見を出した人は、サークルが提案を採用する前に、反対意見に対処するための方法を見つけ出さなければならない。このような努力の後、すべてのサークルメンバーに、反対意見を出す機会を改めて与える必要がある。サークルは、反対意見の提出に期限を定めるポリシーを採用することができ、その期限の経過後に回答がなかった人には、反対意見がなかったとみなされる。サークルメンバーは、サークルが非同期的に提案を処理している間はいつでも、提案者に対し、非同期ではなくリアルタイムで処理するために、提案をミーティングに持ち込むことを求めることができる。その場合、ポリシーに別段の記載がある場合を除き、非同期的な処理は停止され、提案は、ミーティングにおいて再度提案されるまでは、撤回されたとみなされる。

提案または反対意見を出す際、サークルメンバーはロールリードを担っている、またはサークルレプとして代表しているサークルのロールのみを代表することができる。サークルメンバーはまた、ロールリードから一時的にロールを代表する許可を得た場合は、その許可が期限切れとなるかまたは撤回されるまで、そのロールを代表することもできる。

5.3.1 提案の要件

提案を有効とするには、提案者は、以下を満たさなければならない。

  • (a) その提案によって対処される、提案者のロールの1つに関わるテンションを記述できること。
  • (b) そのテンションを説明する過去または現在の状況の実例を共有できること。
  • (c) その実例において、提案がテンションを減少させる方法を合理的に説明できること。

いずれかの時点で、提案が上記の基準を満たさないことがファシリテーターに明らかとなった場合、ファシリテーターは、提案を破棄する必要がある。

5.3.2 反対意見の要件

提案の採用に関する懸念は、反対意見を出した人が次の基準をすべて満たしている理由を合理的に説明できる場合に限り、反対意見とみなされる。

  • (a) 提案が、サークルがそのパーパスまたはアカウンタビリティを実現する能力を低下させること。
  • (b) 提案が、反対意見を出した人がサークルで代表するロールのパーパスまたはアカウンタビリティを実現する能力を制限すること(たとえ反対意見を出した人が組織において他のロールを担っていないとしても)。
  • (c) 提案がなければ、懸念がそもそも存在しないこと。すなわち、提案を採用することによって、新たなテンションが生まれてしまうこと。
  • (d) 提案が確実に影響をもたらすこと。または、提案が影響をもたらす可能性がある場合に、その結果として重大な損害が生じる前に、対応するだけの十分な機会がサークルにないこと。

ただし、上記の基準に関わらず、提案の採用が本憲章のルール、約束事の違反となる場合、提案の採用に関する懸念は常に反対意見とみなされる。

5.3.3 潜在的な反対意見の判定

ファシリテーターは、提案の採用に関する懸念が必要な基準を満たしているか、またどのように満たしているかを、反対意見を出した人に尋ねることにより、懸念を反対意見とみなすかどうかを判定することができる。回答を検証する際、ファシリテーターは、反対意見を出した人が各基準について、論理的な根拠を用いて主張を示したかどうかのみを判断するものとする。ファシリテーターは、主張の正確性やそれに取り組むことの重要性に基づいて判断することはできない。

提案を採用することが本憲章に反するという理由で反対意見が出された場合、ファシリテーターは、それが事実であるかどうかの解釈をサークルのセクレタリーに求めることができる。セクレタリーが事実ではないと結論付けた場合、ファシリテーターは、その反対意見を却下する必要がある。

5.3.4 統合のルール

反対意見の解決を試みる際には、次のルールが適用される。

  • (a) ファシリテーターは、サークルメンバーからリクエストがあった場合には、反対意見を判定する必要がある。反対意見が必要な基準を満たさない場合、ファシリテーターはそれを破棄しなければならない。
  • (b) 反対意見を出した人は、反対意見を解決し、かつ提案者のテンションに対処するような提案の修正を見つけるよう、試みる必要がある。反対意見を出した人が、提案の修正を見つけることを誠実に行っていないとファシリテーターが考える場合、ファシリテーターは、反対意見が放棄されたとみなし、それを却下する必要がある。
  • (c) サークルメンバーは、提案者に対し、提案の背景にあるテンションについて、または提案者がテンションを説明するために共有した事例について、それらを明らかにする質問を行うことができる。提案者がそれらに誠実に回答していないとファシリテーターが考える場合、ファシリテーターは、提案が却下されたとみなさなければならない。
  • (d) 反対意見を出した人は、提案の修正案を示し、それによってテンションが解決される理由について合理的な主張を述べることができる。次に、反対意見を出した人のリクエストに応じて、提案者は、提案者がテンションを説明するために用いた事例の少なくとも1つについて、提案の修正案によってテンションが解決されない理由の合理的な主張を提示する必要がある。必要に応じて、提案者は、提案の修正案がテンションを解決できない理由を説明するために、別の事例を加えることができる。ファシリテーターは、提案者がそれを行うことができない、または行う意思がないと考える場合、その提案を不採用としなければならない。

5.3.5 統合的選挙プロセス

サークルメンバーはまた、サークルレプ、ファシリテーターまたはセクレタリーの選出を求めることにより、サークルのガバナンスプロセスを開始することもできる。現在のファシリテーターは、次の 「統合的選挙プロセス」 を実施する必要がある。

  • (a) ロールの説明: まず、ファシリテーターは、対象のロールを特定し、選挙期間を決定する。ファシリテーターはまた、選挙に関連するその他の情報も提示することができる。この段階と次の段階では、誰も潜在的候補者に関して意見を述べることはできない。

  • (b) 候補者の指名: 各サークルメンバーは、投票用紙またはその他非公開のフォーラムにおいて、サークルメンバーが対象のロールに最も適していると考える適格な候補者を指名する。サークルメンバーは、投票用紙に自身の氏名も記載しなければならず、また棄権や複数人の指名を行うことはできない。

  • (c) 指名共有ラウンド: この段階では、ファシリテーターは、それぞれの指名をすべてのサークルメンバーと共有する。各人について、指名者は、被指名者がロールに適していると考える理由を記載し、その指名者以外の者はこれについて反応しない。指名者は、自身が指名した以外の潜在的候補者に関して意見を述べることはできない。

  • (d) 指名変更ラウンド: すべての指名が共有された後、サークルメンバーは自身の指名を変更し、その理由を説明することができる。応答は認められていない。

  • (e) 提案の作成: ファシリテーターは、指名の数を数え、最も指名が多かった候補者の選出を提案する。同数の候補者がいる場合、ファシリテーターは、次のいずれかを行うことができる。

    (i) 同数の候補者のうちのいずれか1人だけが自分自身を指名していた場合は、その人を提案する。

    (ii) その時点でロールを担っている者が同数の候補者に含まれている場合は、その人を提案する。

    (iii) 同数の候補者から1名を無作為に選出し、その人を提案する。

    (iv) 前の段階に戻り、同数の候補者以外の者を指名した各サークルメンバーに対し、その指名を同数候補者のうちの1名に変更するよう求める。

  • (f) 反対意見ラウンド: ファシリテーターは、提案について反対意見があるかを各サークルメンバーに尋ねる。反対意見が出た場合、ファシリテーターは、その解決を試みるための協議を容認するか、または提案を破棄することができる。破棄の場合、ファシリテーターは、このプロセスの前の段階に戻り、破棄された候補者についてのすべての指名を無視し、その上でそれに代わる提案を行うため、その前の段階の候補者選択のプロセスを適用する必要がある。

サークルは、統合的選挙プロセスにおいて、候補者の指名または提案への回答について期限を定めるポリシーを採用することができる。その期限に達した後、ファシリテーターは、回答しなかった者をその後のプロセスから排除しなければならない。

サークルのファシリテーターは、サークルが選択したロールについて、それぞれの選挙期間が満了した後は、新たな選挙を開始する役割を担う。

5.3.6 ファシリテーターおよびセクレタリーの代理人

ファシリテーターまたはセクレタリーを担っている者がいない場合は、代理人がそのロールとして行為することができる。代理人はまた、本来のファシリテーターまたはセクレタリーが必要時に不在である場合、または何らかの理由で代理人に依頼があった場合も、そのロールを担うことができる。

代理人が必要とされる場合はいつでも、次の優先順位により代理人を決定する。

  • (a) 代理される者によって指定された者。
  • (b) ファシリテーターの場合は、サークルのセクレタリーを務める人、またセクレタリーの場合は、サークルのファシリテーターを務める人。
  • (c) サークルのサークルリード、または複数のサークルリードがいる場合は代理を務めると最初に表明した人。
  • (d) 代理人を務めると最初に表明したサークルメンバー。

5.4 ガバナンス・ミーティング

ミーティング外で非同期的に行われる提案の取り扱いプロセスに加えて、各サークルは、サークルのガバナンスプロセスをリアルタイムで実施するために、定例の 「ガバナンスミーティング」 を持つこともできる。

サークルのセクレタリーは、ガバナンス・ミーティングの予定を立てる役割を担う。定期的に予定されるサークルのガバナンス・ミーティングに加え、セクレタリーは、サークルメンバーの依頼があった場合は速やかに臨時のガバナンス・ミーティングの予定を立てる必要がある。依頼者はさらに、臨時ガバナンス・ミーティングの意図を定め、またミーティングにより変更される可能性がある内容を制限することができる。これには、ミーティングにおいて特定のテンションを集中的に取り上げること、または特定のロールの修正のみに制限することが含まれる場合がある。その場合、その臨時ガバナンス・ミーティングの権限は、示された意図についての提案の取り扱いのみに、および示された制限内での変更のみに制約される。

5.4.1 参加者

サークルのすべてのサークルメンバーがガバナンス・ミーティングに参加することができる。ファシリテーターおよびセクレタリーを担う人もまた、それらがそのサークルのサークルメンバーではない場合でも、参加することができる。その場合、それらはミーティングの期間中の臨時のサークルメンバーとなる。

サークルのサークルレプは、自身のサークルのすぐ外側のサークルのガバナンス・ミーティングに参加するようパートナーを招待することができる。サークルレプは、この招待を1回につき1名に対してのみ、またサークルレプが代表するサークルに影響を及ぼす特定のテンションの取り扱いを支援するためにのみ、行うことができる。サークルレプは、このテンションを自らも認識していなければならず、またサークルで取り扱うことに意味があると考えていなければならない。サークルレプが招待したゲストは、ミーティングの期間中、またはサークルレプが招待を撤回するまで、臨時のサークルメンバーとなる。サークルレプのゲストは、ミーティングにおいてサークルレプと共にサークルレプのサークルを代表することができるが、それは、該当する特定のテンションを取り扱っている間に限られる。

上記以外は、誰もサークルのガバナンス・ミーティングに参加することはできない。

5.4.2 通知および所要時間

サークルは、セクレタリーがすべてのサークルメンバーに対し、ミーティングについて合理的に考えて妥当な事前の通知を行った場合にのみ、ガバナンス・ミーティングを開催することができる。それ以外には、ポリシーに定めがある場合を除き、サークルがガバナンス・ミーティングを開催するために必要な最小限の人数はない。

ガバナンス・ミーティングは、セクレタリーによって当初予定された時間に達した時点で終了する。セクレタリーは、他のサークルメンバーの反対がない場合に限り、ミーティングの時間延長を決定することができる。

ガバナンス・ミーティングの一部または全部に参加しなかったサークルメンバーは、そこで行われた提案に関して懸念を示す機会を得たものとみなされる。よって、サークルは、欠席メンバーを考慮することなく、ガバナンス・ミーティングにおいて提案を採用することができる。

5.4.3 ミーティングプロセス

ファシリテーターは、ガバナンス・ミーティングについて次のプロセスを用いる必要がある。

  • (a) チェックインラウンド: 各参加者は、順番に、自身の現況を共有し、またはそれ以外にミーティングの開始にあたってのコメントを述べる。これに対する応答は認められていない。
  • (b) アジェンダづくりおよび取り扱い: ファシリテーターは、取り扱うテンションについて1つのアジェンダを作り、その後順番に、各アジェンダ項目を取り扱う。
  • (c) クロージングラウンド: 各参加者は、順番に、ミーティングの終了にあたっての振り返りを共有する。これに対する応答は認められていない。

この取り扱いプロセスの間のいずれの時点でも、参加者は、「タイムアウト」 による中断をリクエストすることができる。ファシリテーターは、このリクエストの承諾または拒否を選択することができる。タイムアウトの間、参加者は、運営上の問題や、または本憲章のルールや約束事について協議することができる。参加者は、テンション、提案または反対意見の解決に向けた作業のためにタイムアウトを用いてはならない。ファシリテーターは、いつでもタイムアウトを終了して、通常のミーティングのプロセスに戻ることができる。

サークルのポリシーにより、このプロセスへの追加が可能であるが、本条に定めるルールまたは要件に抵触してはならない。

5.4.4 アジェンダづくり

ファシリテーターは、すべての参加者からアジェンダ項目を募集して、取り扱うテンションのアジェンダを作る。ファシリテーターは、これを事前にではなくミーティングにおいて行う必要がある。各参加者は、希望するだけの数のアジェンダを、それぞれに短いラベルを付けて、追加することができる。ここでの説明または議論は認められない。参加者は、ミーティング中、既存のアジェンダ項目を取り扱う間に1つまたは複数のアジェンダ項目を追加することができる。

定例ガバナンス・ミーティングについて、ファシリテーターは、アジェンダ項目の取り扱いの順番を決定することができる。ただし、ミーティング参加者のリクエストがあった場合、選挙を求めるアジェンダ項目は、それ以外の項目よりも優先されなければならない。参加者のリクエストで予定された臨時ガバナンス・ミーティングについて、該当する参加者は、アジェンダの優先順位を決定することができる。

アジェンダ項目は、1度に1つずつ取り扱われる。選挙のリクエストの取り扱いについては、ファシリテーターは、統合的選挙プロセスを使用する。それ以外の取り扱いについては、ファシリテーターは、以下に定義する統合的意思決定プロセスを使用する。

5.4.5 統合的意思決定プロセス

ファシリテーターは、次のとおりに 「統合的意思決定プロセス」 を実施する必要がある。

  • (a) 提案の提示: まず、提案者はテンションを説明し、これに対処するための提案を提示することができる。提案者のリクエストに応じて、ファシリテーターは、提案者以外の者が提案の作成を手助けすることを認めることができる。ただし、ファシリテーターは、この手助けが、提案者のテンションに対処するための最初の提案にたどり着くためのものとなるように、注視しなければならない。ファシリテーターは、提案に関するそれ以外のテンションまたは懸念についての協議を認めてはならない。
  • (b) 明確化のための質問: 提案者が提案を行うと、それ以外のメンバーは、提案やその背景にあるテンションをより理解するための質問をすることができる。提案者は、それぞれの質問に答えるか、または回答を拒否することができる。ファシリテーターは、提案に関して示された対応または意見を止めなければならず、また、どのような種類の話し合いも行わせてはならない。参加者はまた、この段階において、または参加者が発言を許されたそれ以外の時点で、セクレタリーに対して、提案を読み上げ、または既存のガバナンス(組織構造)を示すよう求めることもでき、セクレタリーは、これに応じる必要がある。
  • (c) リアクション(反応)ラウンド: 次に、提案者以外の各参加者は、提案に対するリアクションを1人ずつ共有することができる。ファシリテーターは、順序を無視した発言、他の者を対話に持ち込む試み、および提案に対してではなく、他のリアクションに対するリアクションは、直ちに止める必要がある。
  • (d) 提案を明確化するオプション: 次に、提案者は、反応に対する意見を共有し、また提案に修正を加えることができる。ただし、修正の第一の意図は、他の人が提起したテンションではなく、提案者のテンションへの対応をより優れたものとするためのものである必要がある。ファシリテーターは、提案者またはセクレタリー以外の人による意見を直ちに止める必要がある。セクレタリーによる関与は、修正された提案を記録することのみに集中する必要がある。
  • (e) 反対意見ラウンド: 次に、各参加者は、1人ずつ、提案を採用することに関する懸念を提起することができる。ファシリテーターは、これらの意見を反対意見として記録するか、または反対意見の基準を満たしているかどうかを確認の上、満たしたものを記録することができる。反対意見がなければ、提案は採用される。懸念を確認し、反対意見を記録する際、ファシリテーターは、反対意見を出した人以外による議論または反応を止める必要があり、また認めてはならない。
  • (f) 統合: 反対意見がある場合、ファシリテーターは、それぞれを1つずつ取り上げる。それぞれの反対意見について、参加者は、反対意見を解決するため、提案の修正案を見つけるためのブレインストーミングを行う。修正された提案であれば反対意見は出ないことを反対意見を出した人が確認し、またテンションへの対処も可能であると提案者が確認した時点をもって、ファシリテーターは、反対意見に解決済みの印を付ける。この段階において、ファシリテーターは、本条に記載する統合のルールを適用する必要がある。すべての反対意見が解決されると、ファシリテーターは、修正された提案をもって反対意見ラウンドに戻る。

5.5 プロセスの破綻

「プロセスの破綻」 は、サークルが本憲章のルール、約束事に反した行動またはアウトプットのパターンを示した場合に生じる。サークルのファシリテーターまたはセクレタリーは、その合理的な判断を用いて、自身のサークルまたはサブサークルにおけるプロセスの破綻を宣言することができる。関係するパートナーは、さらに、潜在的なプロセスの破綻を探すためにサブサークルのレビューを実施するようファシリテーターに要請することができ、またファシリテーターは、要請に応じてサブサークルのミーティングおよび記録を監査し、プロセスの破綻が見つかった場合は、それを宣言する責任を負う。

5.5.1 ガバナンスの失敗による破綻

サークルのファシリテーターはまた、関係者が解決を求めて合理的な時間および努力を費やした後、提案が解決に至らなかった場合にも、サークルにおけるプロセスの破綻を宣言することができる。

5.5.2 プロセスの復旧

権限を有する者がプロセスの破綻を宣言すると、次のことが発生する。

  • (a) ファシリテーターは、サークルにおける提案または反対意見を有効とするための議論の論理的整合性および妥当性を判断する権限を得る。
  • (b) スーパーサークルのファシリテーターは、サークル内の正当な手続きを回復するためのプロジェクトを得る。
  • (c) スーパーサークルのファシリテーターは、サークルのファシリテーターまたはセクレタリーを引き継ぐ権限を得る。
  • (d) スーパーサークルのファシリテーターは、プロセスの破綻が継続している間、サークルに追加のサークルリードをアサインすることができる。追加のサークルリードの判断は、別のサークルリードに依る、それと合致しない判断に優先し、矛盾を防ぐ。

これらの権限は、スーパーサークルのファシリテーターの評価において、サークルの正当な手続きが回復次第、終了する。

プロセスの破綻にあるサークルにスーパーサークルがない場合は、上記の権限はすべて、そのサークル自身のファシリテーターに与えられる。

5.5.3 プロセスの破綻の段階的拡大

1つのサークルにおけるプロセスの破綻がそのスーパーサークルのプロセスの破綻であると自動的にみなされることはない。ただし、それが合理的な時間内に解決されない場合、スーパーサークルもまたプロセスの破綻にあるとみなされる。


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