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はじめに

「#駆け出しエンジニアと繋がりたい」というハッシュタグを巡って、初級者と中・上級者の間で断絶が起こっています。

「技術的な知見を身に着けて成長したいけど、どこから取り組めばいいか分からないので、同じ悩みを抱える人同士で連帯したい」人達がいる一方で、ベテランの方々は「駆け出し同士で繋がっても意味なくない?」と冷めた見方をしている、そんな構図であるように筆者には見えています。

 

世の中に無数にある「OSS1開発の現場」には、先達の助けを得ながら実際の世界を少しずつ良くしていくという体験があり、「駆け出しエンジニア」というレベルから脱して中・上級者になる道がある、と筆者は考えています。

ですが、「OSS開発には誰でも参加できる」とはよく言われるものの、実際に参加している人は少数派です。OSSプロジェクト側は門戸を開いているつもりなのですが、その門をくぐって「OSSを使う人」から「OSS開発に関わる人」になるためには、なかなか越えられない心理的なハードルがあるようです。

そのようなハードルを取り払い、OSSを使うだけの立場から一歩先に進んで、「OSS開発に参加して改善に協力する」「OSSへ有意義なフィードバック2をする」側、いわゆるコントリビューター3になるための方法や考え方を紹介しよう、というのが本書のコンセプトです。GitHub公式の「Open Source Guides」の、コントリビュートの仕方の案内と同じ領域を、より実践的に語った感じと言えるでしょう。

 

本書は*「フィードバックするための準備」に焦点を当てた第1~4章、「最初のフィードバック」に焦点を当てた第5~9章、「フィードバックした後のこと」*に焦点を当てた第10~14章の、3つのパートで構成されています。対象読者としては、次に挙げるような人に役立ててもらうことを想定しています。

  • したい提案、解決したい問題があるが、どう伝えればいいか分からずためらっている。
  • 特に具体的なフィードバックがある訳ではないが、好きなOSSがあってそれに関わりたい、何か力になりたいと思っている。
  • 最新のツールやライブラリを使って製品やサービスを作りたい。「最新版」を不具合を恐れずに使えるようになりたい。
  • 技術者として学びを得て成長したい。分かりやすい成果を出して一旗揚げたい。

「Gitの使い方」「GitHubの使い方」のような特定のツール・サービスの使い方、コーディング上のテクニックなど、個別の具体的な話は本書では基本的に省略して、参考資料を適宜紹介するだけに留めています。言い換えると、本書は「ツールの使い方は分かったけど、いつどこで使えばいいかが分からない」という人向けのコンテンツと言えます。

 

本書の内容は、OSS開発に関わる人を継続的に増やそうという取り組みであるOSS Gateの一環の「OSS Gate東京ワークショップ」において、サポーターとして参加する中で見聞きしたことや、寄せられた質問に対して答えた内容に基づいています。

OSS Gateワークショップは、「OSSへのフィードバック経験が豊富な人の助けを得ながら、仲間と一緒に、初めてのフィードバックを実際にやってみる」イベントです。東京、京都、大阪、広島、札幌の各エリアで現地の有志による開催実績があり、全体では2016年から2020年3月までの間で計70回近く開催されてきました。

開催形態の性質上、本書の初版リリースに前後して騒がれ始めた新型コロナウィルスの感染拡大につながりかねないため、2020年4月現在は定期開催は難しくなってしまいましたが、開催時にはぜひ足を運んでみてください。また、初めてのフィードバックを実際にやって自信が付いたら、次の回ではサポーターとして参加して、後進の人の手助けをしてみて頂ければ幸いです。

本書によってOSSへのフィードバックに挑戦する人が増えて、世の中の問題が1つでも多く解決されることに繋がってくれれば、なによりです。

Footnotes

  1. Open Source Softwareの略。本来は「Open Source」だけでこの意味になるそうですが、本書では基本的にこの表記で統一します。

  2. 障害を報告したり、要望を伝えたり、パッチやプルリクエストの形でコードを提供したりすること。

  3. フィードバックを通じてプロジェクトに協力する人のこと。直訳すると「貢献者」ですが、それだと「滅私奉公」のような仰々しい印象を持つ人もいそうなので、本書ではこう表記することにします。